韓国語で本を読む

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韓国小説や韓国語学習書籍を紹介するブログです。

"날씨가 좋으면 찾아가겠어요"は"勧善懲悪"な物語に疲れた人におすすめ

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出典:https://ridibooks.com/books/

날씨가 좋으면 찾아가겠어요

이도우 著

2018.07.01刊行

ISBN 9788952753953

約17万字

 

날씨가 좋으면 찾아가겠어요(天気が良ければ訪ねて行きます) あらすじ

ソウルで美術教師をしていたモク・ヘウォンは、ソウルでの生活に疲れ、仕事を辞めて冬の間だけ故郷のプクヒョンリで過ごすことにしました。

久しぶりに帰ってきた故郷には、見慣れない小さな書店がオープンしていました。

その書店のオーナーは、高校時代のヘウォンの同級生イ・ウンソプでした。

ウンソプの書店でアルバイトをしたいと言ったヘウォンに、高校時代から密かにヘウォンに片想いをしていたウンソプは喜んでヘウォンを受け入れます。

 

날씨가 좋으면 찾아가겠어요(天気が良ければ訪ねて行きます) 感想

500ページ超えを苦に思わせない、癖がなく読みやすい文体

通勤時間にちょちょこ読んでいたので読了までに半年かかりました。

途中、Naverコミックのとある作品にハマってしまって読むのを止めた期間もあったのですが、ブランクがあっても読み始めるとスッと物語に入り込める不思議な作品でした。

冬の厳しい田舎町の風景が脳裏に浮かぶような癖のない文体で、万年韓国語中級者の私には助かりました。

想像するのは冬の寒々しい風景なんですが、登場人物や作品自体が持つ雰囲気はとても暖かい。

読むのが遅くて真夏に読み終えることになりましたが、冬の休日に布団にくるまって読みたい作品です。

 

良い意味でも悪い意味でも”あっさり”した読了感

ヒロインのヘウォンは母の妹であるミョンヨおばさんと一緒に暮らしています。
その理由は、ヘウォンの母親は、夫(ヘウォンの父親)を殺害した罪で刑務所に入っているからです。

一方、プクヒョンリで小さな個人書店を営むウンソプも、実は小さい頃に養子として今の家にやって来たという過去があります。
そのため、血の繋がらない兄との仲はあまり良くありません。というか、兄が一方的にウンソプを嫌っているような状態です。

なかなかドラマチックな展開を期待させる設定のわりに、あっけなく終わった印象です。

 

登場人物たちがそれぞれ抱える問題のどれにも、はっきりとした答えや結論が出ないまま終わるというか。

それでも面白くなかったわけではないんです。

 

「天気が良ければ訪ねて行きます」というタイトルは、いわば関西人の「行けたら行くわ」「気が向いたら行く」のような意味合いなのですが、物語のラストでヘウォンが下した決断もまさにそんな感じなんです。

彼女の出した結論は、見る人が見たら「逃げ」ともとれるようなものです。

ヘウォンに長年片思いするウンソプも、良い意味で穏やか、悪い意味だとふわふわしている男性。

そして物語の終着点も、何もかもふわっとしてるんですよね。

 

でも、そもそも人生で起きる出来事の大半が、白黒はっきりつけられないまま終わるじゃないですか。
友人や恋人、家族との多少のすれ違いは、モヤモヤしたまま流れてしまって、ドラマのように感情をあらわにしてぶつかり合う、なんてこと早々起きません。

 

一度溝ができてしまった親友とは、時が経って大人になれば普通にしゃべれるくらいにはなるけれど、昔のような仲には戻れない。
たとえ血の繋がった家族だとしても、その人の重大な罪をすべて受け入れることなんてできない。

 

時には逃げたりしながらも、自分の機嫌は自分で取って生きていかないといけない。

そんなことをしみじみ考えてしまう作品でした。

 

と言っても、この作品は始終ほのぼのしていて、悪人も出てきません。

 

ヘウォンとウンソプが恋人同士になったあとも、燃え上がるような恋に発展するわけでもなく、2人はこれまでとさほど変わらない距離感でつきあいを続けます。

唯一変わったことと言えば、ウンソプが書店のブログを更新している間、ヘウォンはウンソプの膝枕でごろごろするようになったことでしょうか。

少しずつ穏やかに愛を育んでいく2人のシーンは、キュンキュンはしないけれど「いいなぁ」と憧れてしまいました。

「情熱的なキスシーンだけが大人の恋愛じゃない」と、この歳になって思い知らされた気分です。

ウンソプのブログで締めくくるラストも好きです。

 

「重大な決断を下して困難を乗り越える主人公」や「勧善懲悪」みたいなキーワードに疲れた方におすすめしたいヒーリング作品です。

 

”날씨가 좋으면 찾아가겠어요” ドラマ化もされています

私はまだ見ていませんが「날씨가 좋으면 찾아가겠어요(天気が良ければ訪ねて行きます)」 はドラマ化もされています。

 

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私的にヘウォン役のパク・ミニョンさんはぴったりだと思います。(小説を読む前からキャストを知ってたからかもしれませんが…)

最近はバリキャリ役の多いパク・ミニョンさんですが、こういう田舎の穏やかな風景もよく合いますね。

ただ、起伏の少ないこの物語をそのまま映像化すると、脚本次第では冗長な作品になってしまう気がします。

評判は悪くないので、どういう風にまとまっているのか気になります。