「(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法」(三宅香帆)で、読書体験の質を上げる
私は人の考察文や感想文を読むのが好きです。
小説に限らず、映画でもドラマでもなんでも、見終えた後には「〇〇 考察」でWEB検索して色んな方の感想や考察(Amazonのレビューも)を読み漁ります。
人の感想文を読むことの何が楽しいんだろう?と考えてみました。
①共感したい
まずはこれだと思います。
ライブのあと、一緒に行った友人とその公演について語り合う時間って必須ですよね。
たまに公演終了時間が遅くて、ライブ後すぐにバイバイしないといけないときなんて本当に悲しい。
それと同じ気持ちなんだと思います。
一冊の本を読み終わって、自分はこういう感想を持ったけど、他の人はどう思ってるんだろう?というのが気になって仕方ないのです。
自分は微妙と思った作品でも、他の方は意外と高評価な感想が多かったり、その逆も然り。
私の場合、「この人の感想文、めちゃくちゃ共感できる!」と思った方のブログは、他の記事も読み漁ってそこから次に読む作品を選ぶことが多かったりします。
②意味が分からなかった部分・気づけなかった部分を教えてもらえる
「読み終えたけど、正直なんのこっちゃ分からんかった・・・」
そんな経験、私はとても多いです。
みんなあの難しい文章や表現から、なんでそんなとこまで読み解けるの?と、いつも不思議に思います。
でも、自分で読んだときはさっぱり理解できなくても、他の方が丁寧に解説してくださっている文を読むと、自分もちゃんと読めた気になれるんですよね。
ここでようやく本題。
今回読んだのは、三宅香帆さんの「(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法」です。
先ほど述べた私の「感想文を読み漁りたくなる理由」の②を解決してくれる本です。
東京で会社員(IT関係だそうです)をする傍ら、プロの書評家としても活躍する三宅さん。
本を愛してやまない彼女が、私のような人間に「難しい本もこうすれば少しは理解できるかもよ」と教えてくれる本です。
書店でこの本を偶然見つけた瞬間「なんて私向けの本なんだ!」と感動しました。
また、著者のおすすめ本を例に挙げて説明してくれるので、書評好きな方でも楽しめる本だと思います。
◆著者の言う「読んだふりにしないコツ」
三島由紀夫の「金閣寺」は、金閣寺を推しのアイドルに置き換えてみたり、J.D.サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」なら、自分を主人公ホールデンと同い年になった気持ちで読んでみたり、と、あの手この手で名作小説を面白く読む方法を紹介してくれています。
中でも、登場人物が多い長編海外文学を読むときは、「こち亀」などの青年漫画を読むときぐらいの軽い気持ちで、知らないキャラが出てきても無視して読み進めてみる、というコツは「なるほどな」と思いました。
古典文学や海外文学を楽しめない人間がやりがちな行動が「気負いすぎる」だと思うんです。
最初から「物語を楽しむ」ではなく「読み解く」気満々で挑むから、「さっぱり分からん状態になったときに挫折してしまうのではないでしょうか。
夏目漱石も、サリンジャーも、現代小説を読むときの気持ちと同じ気持ちで、俗っぽく楽しんでもいいんだと思います。
◆齋藤孝先生の「アウトプットする力」と共通する内容も
本書の中で、L・M・オルコットの「若草物語」を例に挙げて読んだふりをしないコツを紹介している項目があります。
それは、「なんでこの展開!?」とびっくりする箇所に出会い、作者がなぜそれを書いたのかを考えるというもの。
これ、齋藤孝先生が「アウトプットする力」で書かれていた「小説を読むときはツッコミどころを見つける」と同じだったりします。
私は今まで、物語の中でびっくりするところを見つけても「あそこびっくりしたわ〜」で終わってしまっていました。
そこからもう一歩足を踏み出して「なぜこんな展開にしたんだろう?」と考えれば、もっと素敵な読書体験ができていたかもしれないのに。
◆おわりに
紹介されているコツの中には、正直「それは難易度高いわ」と思うものもあったんですが(「メタファーを見つける」とか)、それ以上に「これ実践してみたい!」と思うものがたくさんありました。
そして何より、著者である三宅さんの本への愛がいたるところから染み出しているところが魅力的でした。
三宅さんが言うに、海外古典文学初心者は光文社古典新訳文庫が読みやすくておすすめらしいので、とりあえずその辺りからトライしてみようと思います!