「人生を狂わす名著」(三宅香帆)『正しく読み解けなくてもいい』と思わせてくれる名著
前回、私が人の読書感想文なんかを読みのが大好きなことをお伝えしつつ、三宅香帆さんの「(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法」をご紹介しました。
そして今回は、同じく三宅香帆さんの「人生を狂わす名著50」です。
「(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法」が、「本の読み方」に重点を置いた書評本だったのに反し、今回は完全に書評(と、三宅さんの本愛)に極振りした本です。
出版のタイミング的には「(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法」より前で、三宅さんがまだ大学院生をしながら書店員としてアルバイトをしていた頃に書かれた本のようです。
◆溢れ出る著者の本愛
前回、「著者の本愛が滲み出ている」みたいな感想を述べましたが、今回は滲み出すどころか溢れ出ています。
Amazonのレビューでも書かれていた通り、誤字やてにをは表現の間違いが気になった部分があったのは事実ですし、分かりにくい表現が多かったことも事実なのですが、なんだかもうそれすらもどうでも良くなるくらいの熱量でした。
学生時代、私が「なんのこっちゃさっぱり分からんまま読み終わったけど、まあこんな感じの話やってんな」という感想だけで記憶の隅に押しやってしまっていた本たちを、三宅さんはこんなに面白く読んでいたのだと思うと、素直にうらやましくなりました。
◆共感されなくても、間違っていても良いのかもしれない
読後、人の感想文を読んで「私この本のこと全く読み解けてないどころか、思いっきり解釈違いしてたわ・・・」と恥ずかしくなることが結構あります。
でも、本書を読んでそれでも良いのかも、と思うようになりました。
というのも、三宅さんが語る愛書への解釈の全部が全部納得できるものではなかったんです。
中には「飛躍しすぎでは?」と思うところもありました。
でも、三宅さんは私の引っかかりなんて置いてけぼりにして、その本への愛を語るんです。
その本を読んで何を思ったか。解釈が間違っているか合っているか。なんて気にすることじゃなくて、とにかく楽しんだもの勝ちなのだと強く思わされました。
私ももう良い歳こいた大人。
そろそろ、読書感想文にありがちの「〜を読んで、〜と思った(けど他の人は違うかも)」「〜と感じた(けど合ってるかは微妙)」というクッション表現を削ぎ落とすときが来たようです。
その先に待つ、素敵な読書体験を目指して。
◆おわりに
最後に、「人間の建設」(小林秀雄・岡潔)を紹介するページの中から、とても共感した三宅さんの言葉を引用します。
(略)難しいことを理解するのはめんどうだし辛い。わかりやすいものだけ触れていたい。ーーそんなことを思うときに、この本みたいな「難しいことを語る本」は、すこし役目を果たす。
だって、この本を読んだら、憧れてしまう。難しいことを理解できる彼らに。難しいことを勉強して、そしてふつうの人が見えない世界を見ていることに。
本書を読んで感じる「三宅さんってあんなに難しい本をこんなに楽しそうに読んでいてすごいな~かっこいいな~」という気持ちは、三宅さん自身もすでに経験した感情だったと思うと、一気に親近感が湧いてきますよね。