「いくつもの週末」(江國香織)夫や彼氏に腹が立ったときに読んでほしい本
私は夜更かしが大好きで、週末はなんなら徹夜で本を読んだり映画を見たりしていました。
週末だけは、リビングのソファで寝落ちした主人もほったらかしで、自分の時間に没頭する。
でも、妊娠が分かり早めの産休に入った途端、その習慣はどこかに消えてしまいました。
結婚当初に買ったダブルベッドに主人が潜り込むときに、必ず私も一緒にベッドに入ります。
お腹の子のためにしっかり睡眠を摂らなけれないけない、とか、妊娠中は眠くなる、といった理由もあったのかもしれませんが、何より少しでも主人と一緒に過ごす時間を作りたくなったのが大きい気がします。
仕事をしていたときに比べて、今の方が二人の時間は確実に増えてるのに。
江國香織さんのエッセイ「いくつもの週末」を読んで、その答えがなんとなく見えた気がしました。
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本書は、江國香織さんがもうすぐ結婚三年目を迎えるサラリーマンの「夫」との日常を描いたエッセイなのですが、すごいところが、文章からも伝わるくらい、江國香織さんは「夫ラブ」なんです。
でもなぜか、それが惚気に聞こえない。
それは夫への愛情も、喧嘩をしたことも、あくまで淡々とまるで他人事のように描かれているからかもしれません。
夫婦関係が悪くなったときのことも「詳細は省くけれど、ともかく危機的な状況だった。」と、さらりと書くだけなんです。
でもそれだけで「とにかくヤバい雰囲気」だったであろうことは伝わってくる。
その逆も同じで、江國香織さんが夫のことを愛していることも、直接的な表現はなくても行間から伝わってくるんです。
他人の惚気話ほどつまらないものはありませんが、江國香織さんの手にかかるとめちゃくちゃ面白い。
平日は仕事のためほとんど家にいない夫と過ごす週末を心待ちにしている江國香織さんは、夫婦で過ごす週末を「南の島へバカンスにいくような感じ」だと言います。
その上で、
私たちは、いくつもの週末を一緒にすごして結婚した。いつも週末みたいな人生ならいいのに、と、心から思う。でもほんとうは知っているのだ。いつも週末だったら、私たちはまちがいなく木っ端微塵だ。
南の島で木っ端微塵。
ちょっと憧れないこともないけれど。
と締めくくります。
そういえば、私が主人と結婚した理由は「毎週末、実家と主人の家を行き来するのが大変だったから」でした。
京都〜大阪の中距離恋愛だったため、終電のことも考えると日曜日はのんびり晩ごはんを食べる時間もなく、週末のデートプランは常に「早めに晩ご飯を食べて大阪に帰る」ことを前提に練っていました。
一緒に暮らすようになった今では、日曜日も終電を気にする必要がないことに、未だに二人で感動することがあります。
「毎日が週末みたい」と、主人はよく言うのですが、いつか私たちも木っ端微塵になる日がくるのかもしれません。
ここで最初の話題に戻ります。
私と主人は、ベッドに入ったあと、他愛もない話をしながら寝落ちするときもあれば、ベッドに入った瞬間、お互いおやすみも言わずに寝てしまうときもあります。
それでも一緒に眠りたくなるのは、少しでも二人の間に誤差を生まれさせたくないからなのかもしれません。
共働きだった今までは共有し合えていた仕事へのストレスを、自分が忘れてしまうことが怖い。
そこに、妊娠やつわりといった、男性がどう頑張っても100%理解することが難しい別のストレスがやってきて、理解し合えないストレスをお互いがぶつけ合うようになることを避けたかったんだと思います。
だから、今でも私は働いていたときと同じような時間に起きて、明日も仕事に行かないといけない主人と同じ時間に眠りについています。