韓国語で本を読む

韓国語で本を読む

韓国小説や韓国語学習書籍を紹介するブログです。

『声をあげます』(チョン・セラン)世界観の面白さだけが”SF”じゃないと教えてくれる作品

 

2021年現在、当ブログのタイトルは『韓国語で本を読む』なんですが、ほぼ韓国語で本を読めていません。

 

当たり前ですが日本語で書かれた本の方が気軽に読めることもあり、ついついそちらを優先してしまいます。

 

ただ、韓国語や韓国文学への興味を失ったわけではないので、今回は韓国の翻訳小説を読んでみました。

 

 

 

チョン・セランさんの作品の翻訳小説は今回はじめて読みました。

 

本作『声をあげます』は、チョン・セランさん初のSF短編集だそうです。

 

計8本の短編が掲載されており、そのどれもが独特の世界観を持ったSF作品なんですが、驚いたのが短いお話だと6ページ程しかないということ。

 

SFジャンルにおける一番のキモはその世界観だと思うんですが、その肝心なキモの部分をほとんど説明しなくても面白く描けるのがチョン・セランさんの力量だと思います。

 

世界観どころか主人公の性別すらはっきりしないお話もあります。

 

 

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8作品の中でも私が一番好きなのは、「小さな空色の錠剤」です。

 

アルツハイマー患者のために開発された、服用後3時間の記憶を脳に記憶させることができる薬に関するお話なんですが、一見素晴らしいこの薬が、人類進化の歴史を大きく変えてしまうことになる、というお話です。

 

ある目的のために開発されたものが、思いも寄らない使い方で普及するってよくありますよね。

 

そういえば、気軽に車をレンタカーすることができるタイムズレンタカーが世に広まり出したとき、移動目的ではなく外回りのサラリーマンの休憩場所として活用されているという話を聞いたときは驚いたとともに「天才か」と思いました。

 

本作品で登場するこの素晴らしい薬「HBL1238」は、タイムズレンタカー以上に予想の斜め上をいく用途で広く使われることになります。

 

まずは受験生。

勉強前に服用するだけで、学んだことがドンドン脳に焼き付いていくんです。

ドラえもんの暗記パンが現実になったようなものですよね。

 

そして恋人たち。

2人の大切な思い出として一生覚えておきたい記念日の前に、HBL1238を服用するという。

HBL1238によって脳に定着した記憶はスマホで動画を見るかのようにいつでも鮮明に思い出せるので、恋人たちはデートのときに動画や写真ではなく薬で思い出を記録するようになります。

・・・この使い方は別れたとき地獄なので、私はあまりやりたくないです。でももし恋人に飲もうと言われたら揉めそうですよね。

 

中でも恐ろしかったのが、独裁国家や紛争地域でHBL1238が拷問に使用されるようになったことです。

 

なんとか拷問に耐え抜いて救出されたとしても、拷問されたときの恐怖や痛みが一生頭の中に焼き付き、最後にはショック死してしまうという・・・。

怖すぎる。

 

最後のは恐ろし過ぎましたが、こんな感じでHBL1238は本来の用途とかけ離れた目的で、人々の生活の中に溶けこんでいきます。

 

人々がみんな頭痛薬でも飲むかのようにHBL1238を常用しだしたとき、人類に恐ろしい副作用が出始め・・・。

 

こちらのお話も30ページ弱の短いものなので、なんならこれから先に読んでほしいくらいおすすめです。

 

 

 

ちなみに表題作の「声をあげます」の「あげます」は、「主張する」という意味の「声を(上)挙げる」ではなく、平仮名読みそのままの「give」の意味の「声をあげる」です。

どんなお話か気になった方はぜひ本作品を手に取ってみてください。

 

 

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チョン・セランさんの代表作でもある『フィフティ・ピープル』を読んだときも思ったのですが、チョン・セランさんは時たまドキッとするような恐ろしいブラックユーモアを放ってくるので油断できません。

 

 

 

 

そういうのは苦手!という方には、Netflixでドラマ化もされた『保健教室のアン・ウニョン先生』をおすすめします。

私はこの作品の主人公カップルが本当に大好きで、最後の文章は今でもふとしたときに読み返す程です。

 

 

handoku.hatenadiary.com

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