韓国語で本を読む

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韓国小説や韓国語学習書籍を紹介するブログです。

「現実入門 ほんとにみんなこんなことを?」(穂村弘)ちょっと不思議な世界に紛れ込んでみたい人におすすめのエッセイ

 

今回の本は、歌人である穂村弘さんの「現実入門 ほんとにみんなこんなことを?」です。

 

 

以前紹介した三宅香帆さんの「副作用あります!? 人生おたすけ処方本」で紹介されていた本です。

 

handoku.hatenadiary.com

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本文の一部が引用として紹介されていたのですが、それだけでもかなり面白く、すぐに図書館に借りに走ってしまいました。

 

こちらの「現実入門 ほんとにみんなこんなことを?」は、人生の経験値が極端に低いと自称する著者・穂村弘さんが、未経験のことに挑戦する姿を描いたエッセイです。

 

そう、私は経験値が低い。「家を買う」というような大きなことから「髪型を変える」ような小さなことまで、「万引」のような悪いことから「お年玉をあげる」ような良いことまで、現実内体験がというものが大きく欠けているのだ。

 

 

そんなほむらさんが、担当編集者のサクマさんという女性と初めて挑戦したのは献血

 

もうこの最初の章だけで、ほむらワールドにずっぷり引き込まれてしまいました。

 

献血ルームに来ている他人(ほむらさん曰く「常連さん」)を見て、ほむらさんの頭の中で繰り広げられる妄想が本当に笑える。

 

他にも「占い」や「モデルルーム見学」から「合コン」など、たくさんのことに挑戦するほむらさん。

 

40歳を過ぎたおじさんが、初体験のことへの恐怖を惜しげもなく晒す姿が本当に面白くて、なんだか可愛く見えてしまう。

 

それだけでなく、私は自分自身も人生の経験値が低い人間だと思っているので、共感してしまう部分もあったりして。

 

 

 

 

読み口としては、私が子供の頃大好きだったさくらももこさんのエッセイに近いかもしれません。

 

自分の血がドロドロでおいしくなさそうな理由の一つは「毎晩の菓子パン食い」だと述べるほむらさん。

この「菓子パン食い」という言葉のセンス、さすが歌人さんですよね。

 

ただ、この本にはとある仕掛けが隠されているんです。

それが担当編集者であるサクマさんの存在。

勘のいい方ならあとがきで「ああ、そういうことかー」となるのかもしれませんが、私は意味が分からずネットに頼りました。

 

種明かしを読んだ後、改めて穂村弘さんの「自分の世界に引き込む力」を思い知って、御堂筋線の車内で少しの間呆然としてしまいまいした。

 

軽くて笑えるエッセイを読んでいたはずなのに、不思議な世界に紛れ込んで帰ってきた後のような読後感を味わえる、クセ強名作エッセイです。